ジョブ型でつまずく典型的誤解についての解説とアドバイス 第一弾
Q&A:HRAIからの回答
Q1)解雇
ジョブ型の組織作りを確立させるには、解雇ができないと難しいのではないですか?
(例えば、ポジションクローズがあった場合に解雇できないと 配置転換が必要になる、それではメンバーシップ型とほぼ変わらないのではないですか)
A1)
まず、大前提として、「アメリカでは自由に解雇できる」と日本では思われているようですが、それは正しい認識とは言えません。社員との雇用契約に対する企業の責任は日本とアメリカで基本的な違いはありません。理由の希薄な契約解約(解雇)に関しての訴訟リスクは同等にあります。
次に、「ポジションクローズがあった場合」という状況を整理して考える必要があります。アメリカにおいて解雇可能となる場合は、社員の側がそのポジションクローズに納得感が持てる場合です。
自由を重んじる米国では「Employment at will(随意雇用)」という、雇う側・雇われる側のお互いの意思で雇用契約をやめることができるという概念が昔からあります。しかし、これは雇用主がいつでも従業員を自由に解雇できるということではありません。悪意や解雇事由の希薄な解雇はもちろんのこと、公共政策、雇用均等法など数々の条例や法律、また、労働組合との労働協約に則っていないものはすべて訴訟問題につながります。
アドバイス)
最後に、最も重要な点として、どの国の組織であっても、解雇を念頭に「ジョブ」を基盤とした採用や育成、異動などの人事施策を行っているのではありません。
組織の目的は、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を実現することであり、ゴールを達成することにあります。その為には、一人一人の「ジョブ(職務・役割)」の明確化と同時に各人のKSA(知識・スキル・能力)を組織が把握することが最も有効であり、不可欠であるとされているのが「ジョブ型」と日本で言われている、多くの国で行われている人事の本質です。
一方で日本型人事いわゆるメンバーシップ型にも利点は沢山あります。人事施策に欠点のない解決策や画一的な万全策はありません。
Q2)ジョブディスクリプション
ジョブ型人事をすると、ジョブの文書の仕事しかしない、といった社員が多数出てくる のではないでしょうか?
A2)
ジョブ型は、作業の分割・仕事の分断ではありません。ジョブを明文化したジョブ・ディスクリプション(JD)の第一の目的は、各人が達成すべき役割と責任 そして目標(成果物)を明確にすることにあります。正しく規定されたJ Dには、組織のミッションや戦略、付加価値に直接的・間接的に紐づけがされています。また一人一人の主たる業務、補助的業務、チーム・部署・組織全体への貢献に対する責任などが記載されています。
JDは作業指示書ではなく、期待するパフォーマンス、成果を各従業員と組織がお互いに確認し同意した上でコミットをする書面です。ウェビナー中にも解説した通り、例えば「派遣の業務内容確認書」とは真逆にある物です。どの様なジョブでも他のジョブとの繋がり、アラインメントが必要であるので、他のジョブとの相関関係もJDで可視化することにより、仕事のアラインメントを一層強めて組織全体の業務効率を高める効果もあります。
アドバイス)
その点を押さえてジョブ型の基本をなすJ Dを経営者、直属の上司、人事が的確に明文化し、各従業員に説明し、従業員が理解した上で如何にコミットさせるか、が「ジョブ型人事」の成否を握ると言えます。
今後、DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速化され、多くのジョブが変化してきますので、なおさら、詳細な作業項目を書くのではなく、職務の役割・達成すべき成果を明確にしていく必要があるでしょう。
具体的なJDの例を挙げますと、ある大手グローバル企業におけるマーケティング・マネージャーの主要ジョブは、「マーケットシェア強化」、「ブランディング(商品イメージの確立)」、「メンバーとチーム力の強化」と簡潔、明瞭に記されています。
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