HRとAIの融合について考える 3回シリーズ〜第2回「人事哲学とA I」 - 人事資格認定機構-HRAI-

2024/05/09

HRとAIの融合について考える 3回シリーズ〜第2回「人事哲学とA I」

1) 人事哲学の定義

人事哲学*については、2024年開催の「第二回世界人事会議」のテーマとしていますが、人事を考える上で土台をなすものです。

*「人事哲学」とは、どの様な人財(ヒューマンキャピタル)を組織に獲得し、どの様に人財に活躍してもらうのか、ということを明確に定義することである。

 

人事哲学は組織の文化を形作り、すべての人事政策、プロセス、プログラムの基盤となります。それにより、組織内の各種の決定が一貫性を持ち、従業員と組織の両方にとって最良の結果を導き出せるようにします。人事哲学は組織のリーダーシップによって形成され、全従業員に共有され、理解され、実践される必要があります。

 

2) A Iを活用するH Rは前提として「人事哲学」が必須

AI技術をHRで導入・活用する際に人事哲学を大切にする理由は、以下に集約できるでしょう。

 

⚫︎倫理的ガイドラインの提供: 人事哲学は組織の倫理観を形成し、それに基づいて行動するフレームワークを提供します。AIの導入にあたっては、プライバシーの保護、データの透明性、偏見の防止など、多くの倫理的課題が伴います。人事哲学はこれらの課題に対処するための倫理的基準を提供し、AI技術の適切な適用のガイドラインとなります。

 

⚫︎組織の価値観との整合性: AI技術をHRに導入することは、単に先端技術の導入以上の意味を持ちます。この技術が組織の核となる価値観や目標とどう整合するかを見定めることがまず重要です。人事哲学は、AI技術の導入が組織の文化や目指すべき方向性に沿ったものであることを判断する基準となります。

 

⚫︎中心のアプローチの維持: 人事哲学は従業員を組織の最も重要な資本(人的資本・ヒューマン・キャピタル)とみなし、人財の成長、モチベーション、エンゲージメントを重視します。AIを活用することで、これらの要素が機械的に処理されるようになりがちですが、人事哲学は人間中心のアプローチを維持し、AI技術が従業員の利益を損なうことなく、また人財の活用が機械的に数値のみで処理・判断されることがないように組織を導きます。

 

⚫︎持続可能な人事戦略の策定: AI技術の導入で効率化やコスト削減といった短期的なメリットにより焦点が当てられるでしょう。その一方で、人事哲学は長期的な視点を提供します。組織の持続可能な成長と発展を支える人事戦略を策定する際に、人事哲学は従業員の能力開発やキャリアパスの構築など、長期的な目標に焦点を当てるための指針となります。

 

⚫︎コミュニケーションとエンゲージメントの促進: AI技術を導入することで、従業員とのコミュニケーションやエンゲージメントが形式的になるリスクがあります。人事哲学は、従業員との関係を重視し、AI技術が人中心(ヒューマン・セントリック)のアプローチを補完する為に活用されることを担保します。

 

人事哲学はHRにおけるAIの導入が単なる技術的な進歩ではなく、組織の根本的な価値と目標を反映するものであるべきだという考え方を強調します。

これにより、AI技術が人間を支援し、組織全体の利益に寄与する方法で利用されることが保証されます。

 

3) 世界基準で「人事哲学」を考える

今年2024116日から8日の日程で開催される「第二回世界人事会議」では、日本ではまだあまり語れることのない「人事哲学」をテーマに、世界の人事プロフェッショナルが東京の会場に集い共に考える貴重な機会を皆様に提供いたします。

https://hraionline.wixsite.com/24ghr

 

人事に国境はなく、組織が持つべきは「人事哲学」

「ヒューマン・セントリック(人中心)」はアプローチ

X

「データ・ドリブン(データ駆動型)」なプロセス

組織の発展に直接寄与する人事

 

4) 日本の哲学がキーになってくる

世界はますます相互につながり、国境を越えた交流やコラボレーションが日常化しています。情報や技術の進歩により、地球上のあらゆる場所から人々が直接コミュニケーションを取り、アイデアや文化を共有することが容易になりました。

経済的には、グローバルな市場が企業や個人に新たな機会を提供する一方で、競争も激化しています。国境を超えて技術や労働力の流動性が高まり、組織は必然的に世界中でのビジネス展開を追求し、優秀な人財獲得の獲得を行なっています。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティー&インクルージョン)は全ての組織において最重要課題となっています。

DE&Iでは、人々の多様な文化やバックグラウンドを尊重し、それを組織や社会全体の利益に活かすことを重要です。さまざまな文化を尊重することは、個々の異なる経験や視点を理解し、組織内での多様な人材の力を最大限に引き出すために不可欠です。

多様性の第一歩としては、まず自らを客観的に理解し、正しく伝えていくこと。

私たちは、原点として「日本の哲学」を今一度私たちは顧み、また世界に発信・共有してく必要があるのではないでしょうか。

日本の組織がこれまで培ってきた価値観(品質への追求、精密な技術、協調性やチームワークの重視、継続的な改善への取り組み)は常に世界から注目されています。

 


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