賃金のジェンダー格差:日本と米国の現状(1)
女性<男性 日本の格差25.7% 米国の格差18%
1)日本では米国よりもジェンダー格差が大きい
厚生労働省令和2年賃金構造基礎統計調査の概況によると、日本における男女間賃金格差は男性を100とした場合、女性は74.3となっており、女性は男性に比べて賃金が25.7%も低くなっている。一方米国における調査2022 State of the Gender Pay Gap Report によると、米国では男性を1ドルとした場合女性は0.82ドルとなっており、女性の賃金は男性に比べて18%低い。
日本女性−25.7% < −18% 米国女性となっており、日米間のジェンダーギャップ問題は明らかに日本においてより深刻であることがわかる。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/dl/13.pdf
https://www.payscale.com/research-and-insights/gender-pay-gap
2)「同一労働同一賃金」における日米のジェンダー格差比較
米国における調査では、Controlled gender pay gapの項目がある。これは役職、教育レベル、経験、産業、職務レベル、労働時間など、賃金を決定する要因となる事項を全て鑑みた上での男女賃金比較で男性1ドルあたり女性は0.99ドルとなっている。つまり女性は1%賃金が低くなっている。たかが1%の差で、ほぼ100%ではないか、と思っていけない。なぜならば、同一労働同一賃金の原理原則の元で、これは当然100%でなければならないからである。
日本の調査では、同一労働同一賃金に当たる項目はなく、年齢、学歴、企業規模、産業、雇用形態、役職で縦割りの調査が行われている。これは日本では「終身雇用・年功序列」に根付いた賃金制度が依然として広く一般的であるためであると考えられる。 一方米国(および日本以外の多くの国々)では、日本で通称的に「ジョブ型雇用」と呼ばれている、個人のKSA(知識、スキル、資質)に基づいた雇用形態が広く一般的であるため、同一労働同一賃金の調査がより重要となってくる。
そういったことから日本でより同一労働同一賃金に近しい調査項目として「役職別にみた賃金」を見てみたいと思う。
男性を100とした場合、部長級では女性は86.5、課長級では88.798、係長級では83.368、非役職者で83.171となっている。どの役職を見てもジェンダー格差があるが、最大の格差があるのは非役職者で女性の賃金は男性に比べて16.8%低く、ついで部長職で13.5%低くなっている。
同一労働同一賃金の目線で日米のジェンダー格差を比べた場合、日本 (役職別にみた賃金の平均値) 86.71に対し米国99%と、ここでも日米の差は非常に大きい。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/dl/13.pdf
※日本における男女間賃金格差は男性を100とした場合、女性は74.3であるので、役職別に縦割りでみたジェンダー格差の方が遥かに小さい。これは調査対象が常用労働者であることがキーファクターとなっている。(企業規模別にみた賃金の調査項目なども参考にされたい)。
(参考資料)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/dl/13.pdf
https://www.payscale.com/research-and-insights/gender-pay-gap
次回はジェンダー格差に対して日米政府の政策や、日米のジェンダー差別の原因の本質的違いについて解説していきたい。
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華園ふみ江
一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表
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