2021/04/01

「思った人と違う」~採用後のミスマッチ発覚~

4月1日、日本企業にとっては新卒入社という大切な日です。

採用する側も、採用された側も期待と夢に胸を膨らませてワクワクとするものでしょう。

それは、転職組も同様で、採用側は即戦力に、採用された側は新たに活躍できる土壌にポジティブな期待で新たなキャリアをスタートさせます。

 

ミスマッチ~どうして起こる?

新卒であれ、転職であれ、「終身雇用型」または「ジョブ型」であっても、ミスマッチは起こります。そしてこれは会社にとっても、社員にとっても最大に不幸なことです。

履歴書を厳選し、何度も面接をし、必要であれば採用試験・適性検査も行い、バックグラウンドチェックを行う場合もあるでしょう。それでもミスマッチは起こります。どうしてでしょうか?

 

無意識のバイアス~Unconscious Bias

無意識のバイアスは、誰もが潜在的にもっている偏見で、以下の様に定義されます。

『育つ環境や所属集団のなかで無意識のうちに脳に刻み込まれ既成概念・固定観念になっていく。人間の認識・記憶・判断・表現の過程で行われるショートカットに、この無意識のバイアスが影響を与える。特に、採用や昇進など人事の場面で無意識のバイアスが働くことが知見となってきた。』

 

採用における無意識のバイアスの代表的なものは下記があげられます。

 

  • ステレオタイプ

例えば「女性は生まれつき数字の能力、論理性に欠ける」「男性は営業職に向いている」といった社会に既に存在する先入観。

  • 属性によるバイアス

性別・職業・学歴・人種などに基づく集団の代表的な特徴を想定し、集団に属する人間は誰もがそうした特徴を持つと判断してしまうこと。 例えば「信用できる、できない」を属する集団により判断し、同じ集団に属さない人には警戒心を持つ。

  • 類似性(私に似ている)

自分と共通する部分を持つ人に親近感を抱き、面接者と共通する事項も持つ人を採用してしまうこと。

 

無意識のバイアスは認識している以上に一般的なものであり、採用の過程でこの無意識のバイアスが作用しないための対策を講じることが大切です。組織においては「人事」が中心となって無意識のバイアスが採用の過程において働かないよう、啓蒙、教育、排除するための施策を継続的に実行していく必要があります。

無意識のバイアスを排除し、組織が求める「人財」の採用を行うことが組織の成長を大きく左右します。しかしながら、無意識のバイアスは人が意識的に排除できるものではないとも考えられています。では、どうすればいいのでしょうか?

組織の成長に必要とされる人財の採用をするために、人事の戦略的役割がここでも求められています。

 

無意識のバイアスを排除するために~人事の重要な役割

  1. 無意識のバイアスについて正しい知識を得る。
  2. 無意識のバイアスについて組織内で啓蒙、教育をおこなう。
  3. 無意識のバイアスを排除するための採用面接における施策を構築し実施する。

 

採用における具体的な施策とは、例えば応募書類の形式を変えて、無意識のバイアスのトリガーとなりやすい事項を記入しないようにする。(ブラインド・スクリーニング)、全ての応募者に共通の質問をする(構造的面接手法)などが代表的なものです。

 

ここでの人事の重要は役割とは人財フィロソフィー(どのような人財が欲しいのか)をまず人事戦略の冒頭に掲げ、欲しい人財の(KSAs-知識・経験・能力)に注目した採用が実施できる施策を構築し、実施することです。まさに、人事の戦略的役割の中心といえるでしょう。

施策を実施するには、組織内の教育が最も大切です。施策の目的、実施に至った背景などをきちんと伝えたうえで、面接官そして重要な役割を果たすマネージャーに啓蒙・教育を人事が徹底できるか、にその施策の成功はかかっています。

 

SHRMエッセンシャルズ日本語プログラムでは、モジュール2の人財獲得において、無意識のバイアスについて詳しく述べ、人事プロフェッショナルとしてどのような対策をするべきかについても具体的に解説しており、理論と実践を学ぶことができます。

戦略的人事の役割を果たす為にはまず専門知識の習得と手法のマスターが欠かせません。知識の習得をして、人事の専門家としての証明書(SHRMクレデンシャル資格)を得ることは、人事プロフェッショナルとして組織内において、無意識のバイアスを排除する啓蒙・教育を行う、施策を実行するなどといった場面で非常に役に立つでしょう。そして組織内で受け入れられ方が明らかに変わるでしょう。つまり人事施策の効果がより高まるでしょう。

まず、何をするか、どの様に行うか、そして誰がするか。人事プロフェッショナルとしてより良い人事戦略をたてて人事戦略を司る。それ以外により良い組織を育てる道はないのではないでしょうか。

 

「知識は力である」とSHRMは教材の冒頭に掲げています。

「資格はパスポートである」と私は付け加えます。

パスポートがあればボーダー(様々な境界線)を通過することができます。人事のプロフェッショナルとして活躍できる場が広がります。

 

最後に~継続的な啓蒙・教育を

無意識のバイアスは採用時にも注意が必要ですが、健全な組織を育て維持していくために

様々な場面で無意識のバイアスが健在意識の良識を越えないよう、人事が組織全体に向けて啓蒙と教育を継続的に行っていくことが重要です。

 

追記~すべての組織に人事プロフェッショナルの登用を

今般、オリンピック委員会での発言問題など、まさに無意識のバイアスによる発言の顕著たる例だと思います。これまでは、その様な発言は許容される場面が多かったと思います。特に日本社会においては。しかしながら、その様な時代はすでに過去となっています。

また、無意識のバイアスによる差別的発言は、被差別者から抗議を受けた場合、往々にして差別的発言に続いて「冗談だ。軽口なのに、そんなにむきになるなんて大人げない」などと言って更に被差別者に追い打ちをかけるような傾向がありました。

この発言問題は無意識のバイアスの中でも、ステレオタイプ(性別)に分類されるのはもちろんの事、マイクロアグレッション(些細な侮辱)の要素も多大に見受けられます。マイクロアグレッションは日常の相互関係のなかで他者に横暴な態度をとることで、話の最中に口をはさむ、存在を無視する。本人の前でその人の代弁をするなども含まれます。

誰もが潜在的に持つこの「無意識のバイアス」。啓蒙と教育がまだまだ社会全体で必要です。

オリンピック委員会にも人事プロフェッショナルが必要だと思います。そして、人が集まるどの様な組織にも人事のプロフェッショナルが必要とされている時代を実感しています。