HR とAI の融合について考える 3回シリーズ〜第1回 ステイタス・クオ(Status Quo)
1) HRにおける代表的なAIの活用例
以下が挙げられ、日本でも既に導入し活用している組織や、導入に向けて積極的に検討をしている組織が多い事でしょう。
1. 採用プロセスの改善: AIは、応募書類や履歴書を自動的に分析し、適切な候補者を選別するのに役立ちます。これにより、人事担当者の時間と労力を節約し、より的確な候補者をスクリーニングできます。
2. 応募者へのインタラクション: チャットボットや自動応答システムを利用して、候補者とのコミュニケーションを自動化することができます。面接のスケジューリングや一般的な質問への回答など、一部のタスクをAIが担当することで、迅速かつ効率的な対応が可能になります。
3. 従業員のスキルマッチング: AIを使用して、従業員のスキル、経験、興味を分析し、適切なプロジェクトやチームに割り当てることができます。これにより、従業員のモチベーションと生産性を向上させることができます。
4. 離職率の予測: AIは、従業員のパフォーマンス、行動、フィードバックなどのデータを分析して、離職リスクを予測するのに役立ちます。これにより、人事チームは離職を予防し、タレントの定着率を向上させるための戦略を立てることができます。
5. 従業員のトレーニングと開発: AIを使用して、従業員の強みや成長の機会を特定し、カスタマイズされたトレーニングプログラムを提供することができます。個々のニーズに合ったトレーニングを提供することで、従業員のスキルとモチベーションを向上させることができます。
2) SHRMが提唱するAIとHRの融合
皆さんご存知の通り、SHRM(Society for Human Resource Management)は、人事における世界最大の専門団体であり、AIとHRの融合についても積極的な提唱を行っています。SHRMが提唱するAIとHRの融合をまとめると以下のようになります。
1. データ駆動の人事戦略:AIを活用することで、人事部門は大量のデータを収集・分析し、従業員のパフォーマンス、モチベーション、離職率などの指標を把握することができます。これにより、データ駆動の人事戦略を構築し、より効果的な意思決定を行うことが可能になります。
2. 候補者の選考プロセスの改善:AIを使用して、履歴書や応募書類のスクリーニングを自動化することで、候補者の選考プロセスを効率化することができます。また、AIを活用した面接の自動化や評価システムの導入により、客観的かつ公平な選考プロセスを確保することができます。
3. 従業員エンゲージメントの向上:AIを活用して、従業員のニーズや要望を把握し、個別にカスタマイズされたエンゲージメントプログラムを提供することが可能です。また、AIを活用したフィードバックシステムやチームビルディングツールを導入することで、従業員間のコラボレーションや相互作用を促進することができます。
4. スキル開発とトレーニングの最適化:AIを活用して、従業員のスキルや知識のレベルを評価し、カスタマイズされたトレーニングプログラムを提供することができます。また、AIを活用したオンデマンドの学習コンテンツやスキルマッチングプラットフォームを活用することで、従業員のスキル開発を支援することができます。
SHRMは、これらの取り組みを通じて、AIとHRの融合が人事管理における効率性と効果性を向上させ、組織の成果や従業員の満足度を高めることに貢献すると考えています。
3) アメリカの企業での導入の現状
当然ですが、アメリカの企業においてAIの導入率は着実に増加しています。人事におけるAIの導入は、業界や企業の規模によって異なりますが、以下のような傾向が見られます。
1. 大企業の導入率が高い: 大規模企業やテクノロジー企業など、リソースと技術力を持つ組織では、AIを積極的に導入しています。これらの企業は、大量のデータを分析し、効率を向上させるためにAIを活用しています。
2. 人事ソフトウェア市場の成長: アメリカでは、HRテック市場が急速に成長しています。これにはAIを活用した人事管理ソフトウェアが含まれており、多くの企業がこれらのソフトウェアを導入しています。
3. 採用プロセスの自動化と改善: AIを活用した採用プロセスの自動化が一般的になっています。履歴書のスクリーニングや候補者とのコミュニケーション、面接のスケジューリングなど、様々な面でAIが活用されています。
4. 従業員エンゲージメントの向上: AIを活用して従業員のエンゲージメントを向上させる取り組みも増えています。チームのパフォーマンスを分析し、フィードバックを提供するAIツールなどが導入されています。
日本の企業におけるAIの導入は、HRの作業効率化や生産性向上を目指す取り組みが中心ですが、徐々にその範囲が拡大しています。今後も技術の進化やデジタル化の推進に伴い、AIの導入率はさらに増加していくでしょうし、今後は従業員のエンゲージメントやモチベーションを高める為に活用する企業も増えていくと思われます。
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華園ふみ江
一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表
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