世界の人事資格の現状(2026年版・最新版) 後編 

世界の人事資格は「知識証明」から「経営参画能力の証明」へ

世界の人事資格は「知識証明」から「経営参画能力の証明」へ

GHRアカデミーを含めて世界の主要な人事資格(SHRM、HRCI、CIPD、IHRP 等)を俯瞰すると、共通して見えてくるのは、人事を経営の中核機能として捉える流れです。

従来の人事資格は、

  • 人事制度
  • 労務管理
  • 法令知識

といった「守りの専門性」を証明する側面が強くありました。

しかし現在、特に世界基準では、人事資格は次の能力を備えているかどうかを問うものへと変化しています。

  • 人的資本を経営指標として説明できること
  • データ(People Analytics)を用いて意思決定に関与できること
  • 事業戦略・財務戦略と人事を統合的に語れること

この変化こそが、アメリカにおいてCHROが経営幹部として高く評価され、人事職全体の報酬水準が大きく引き上げられている背景です。

2021年以降、世界の人事資格取得者はどのように増えているのか

― 公開データで確認できる地域別動向 ―

世界的に人事資格は、「知識の証明」から「人的資本経営を実装できる専門職の基準」へと重心を移しつつあります。ただし注意すべき点として、すべての人事資格団体が、地域別・年次別の資格取得者数を同一基準で公開しているわけではありません。

ここでは、2021年以降の動向について、公式資料や年次報告書などで「人数が明示されているもの」に限定し、リージョン別に整理します。

欧州(Europe):CIPD(英国を中心とする欧州の代表的団体)

欧州において最も継続的にデータが確認できるのが、英国の人事専門職団体 CIPD(Chartered Institute of Personnel and Development) です。

CIPDは年次報告書において、地域別の会員数を公表しています。

  • 2021年度末時点では、
    英国 142,124名、アイルランド 6,493名、中東 5,041名、アジア太平洋 2,276名、合計 155,934名 の会員が在籍していました。
  • 2022年度末には、
    英国 144,416名、アイルランド 6,512名、中東 5,157名、アジア太平洋 1,753名、合計 157,838名 へと増加しています。
  • その後の年次報告や公式発表では、
    2023–24年に 世界の会員数が162,000人超
    2024–25年には 約165,000人規模 に達したことが示されています。

これらの数字は、欧州において人事が専門職(Profession)として制度化され、
資格・会員制度が継続学習と一体で運用されている成熟市場であることを示しています。

(出典:CIPD Annual Report 2021 / 2022、CIPD公式サイト掲載データ)

アジア(Asia):IHRP(シンガポールの国家的HR認定制度)

アジアにおいて、人数の増加が明確に数値で確認できる例として挙げられるのが、
シンガポールのIHRP(Institute for Human Resource Professionals)です。

IHRPは国家戦略として人事の専門職化を進めており、公式発表の中で認定者数の現状と目標を明示しています。

  • 2023年時点で、IHRPの認定コミュニティは 約6,800人超
  • 2024年3月時点では、認定者数が 9,000人超
  • 2025年には 12,000人、2027年には 15,000人 を目標とする方針が示されています

2021年・2022年の年次データは一貫した形では公開されていないものの、2023年以降、短期間で認定者数が大きく増加していることは、公式声明から明確に確認できます。

(出典:IHRP公式発表、シンガポール人材政策関連資料)

中東(Middle East):CIPD会員データによる地域別動向

中東地域については、単独の資格団体が地域全体を網羅する統計を公表していないため、CIPDが年次報告書で示している 「Middle East」会員数 が、数少ない比較可能な指標となります。

  • 2021年度末:中東地域会員 5,041名
  • 2022年度末:中東地域会員 5,157名

増加幅は大きくありませんが、中東では近年、ガバナンス強化や人的資本投資が進んでおり、国際標準に接続する人事資格・職能インフラが着実に定着しつつあることが読み取れます。

(出典:CIPD Annual Report 2021 / 2022)

アフリカ(Africa):SABPP(南アフリカの人事専門職登録制度)

アフリカでは国・地域によって公開度に差がありますが、南アフリカの SABPP(South African Board for People Practices) は、比較的明確な登録者数を公表しています。

  • 2021年時点で、SABPPの登録メンバー数は 6,064名
  • 2023年には、資格カテゴリ別の内訳を含め、
    登録メンバー総数が 10,402名 に達したことが報告されています

これは、2021年から2023年にかけて約72%増という大幅な伸びであり、
アフリカの一部地域では、人事の専門職化が急速に進んでいることを示しています。

(出典:SABPP Annual Report / 公開登録統計)

アメリカ(United States):SHRM認定保持者数の推移

アメリカについては、「地域別」に限定した資格保持者数は公表されていませんが、
米国発の代表的資格団体 SHRM(Society for Human Resource Management) が、
有効な認定保持者数(Active Certificates)を年次で公表しています。

  • 2022年時点:SHRM認定保持者 127,046名
  • 2023年時点:SHRM認定保持者 133,894名

1年間で 約5.4%増 となっており、米国では人事資格が市場で通用する専門性・実務能力のシグナルとして機能していることが分かります。

(出典:SHRM Annual Report / SHRM公式統計)

数字が示す世界の共通トレンド

2021年以降の公開データを総合すると、地域ごとにスピードや形は異なるものの、
世界共通で次の傾向が確認できます。

  • 欧州では、専門職としての人事資格が安定的に拡大
  • アジアでは、国家主導型の制度設計により短期間で急増
  • アフリカでは、制度化が進む国・地域で急速な伸び
  • アメリカでは、資格がキャリア前提条件として堅調に増加

日本における人事資格は、次の段階へ進めるか

一方で、日本における人事を取り巻く環境には、人事資格やグローバル人事教育以前の、より根深い構造的課題が存在しています。

日本ではいまだに、人事は専門教育を受けなくても、現場で経験を積めば対応できる仕事であるという認識が広く共有されています。その結果、人事は専門職として体系的に育成すべき対象とは見なされにくく、教育や資格取得への投資は、他の専門領域と比べて著しく限定的です。

多くの企業では、人事は定期的な人事異動の中で配属され、OJTを中心に自社固有の制度や運用を学びながら業務を遂行します。しかしその学習内容は、あくまで「自社の人事」に限定されたものであり、国際的に共通する世界基準の人事の定義、概念、フレームワークを体系的に学ぶ機会は、ほとんど与えられていません。

さらに数年が経過すると、再び別部門へ異動となり、人事の専門性が十分に蓄積されないままキャリアが進んでいくケースも少なくありません。この構造が、日本において人事が「専門職として成熟しにくい」要因の一つとなっています。

また近年、グローバル展開の加速に伴い、グローバル人事部を新設・拡張する企業も増えていますが、その多くは、適切なグローバル人事教育を受けないまま業務を開始しているのが実情です。結果として、現場対応に追われながら試行錯誤を重ねる、いわば体当たり型の運用に陥りがちです。

このように、人事職への認識が遅れていると言わざるおえない日本においても人的資本経営を求める波は押し寄せており、人的資本情報の開示の本格化や、経営と人事の一体化が進む現在、日本の人事に求められているのは、「制度を運用する人事」から
「企業価値(EV)を高めるために人的資本を設計・実装できる人事」への進化です。

GHRアカデミーの位置づけ

― グローバル人的資本経営を“実装”する人事へ ―

こうした世界的な潮流を背景に、日本発の人事資格体系として展開されているのが
GHRアカデミー です。

GHRアカデミーでは、特に世界基準の人事専門職として、グローバル人的資本経営を実装するための知識・スキル・能力(KSAs)に比重を置いたプログラムを提供しています。

なかでも上級プログラムとして位置づけられているのが、

  • 【上級】人事国際教育プログラム
  • HRビジネスパートナー講座 です。

これらのプログラムでは、人事制度や理論を学ぶこと自体を目的とするのではなく、

  • 人的資本がどのように企業価値(EV-Enterprise Value)に影響するのか
  • 人事として、経営・事業にどう貢献すべきか
  • CHROやHRBPとして、どのように意思決定に関与するのか

といった、経営直結型の視点を重視しています。

人事資格は「ゴール」ではなく、「経営に関与するための入口」へ

世界の人事資格の現状、アメリカの人事職・CHROの年収データを総合すると、ひとつの結論に行き着きます。

人事資格は、もはやゴールではありません。経営に関与するための「入口」へと進化しています。これからの時代に求められるのは、ただ単に人事資格を持っている人事ではなく、資格で得た視点・言語・思考を用いて、企業価値(EV)を高められる人事です。

GHRアカデミー プログラム体系(世界基準のグローバル人事教育のロードマップ)

STEP 1|基礎(BASIC)
Global HR Education Program BASIC(GHR-P Basic)
→ グローバル人事の共通基盤としての定義・用語・基本概念を体系的に理解します。

STEP 2|中核(Professional)
Global HR Education Program(GHR-P)
→ 世界基準におけるグローバル人事の定義と主要実務を統合的に学び、実務に適用できる力を養います。

STEP 3|上級(Advanced)
【上級】人事国際教育プログラム(GHR-P Advance)
→ グローバル人的資本経営を設計し、組織に実装するための戦略的視点を身につけます。

Specialized Programs

HRビジネスパートナー(HRBP)講座
→ 事業・財務・人事を横断的につなぎ、企業価値(Enterprise Value:EV)の向上に貢献する人事の専門性を確立します。

ピープルアナリティクス入門基礎講座

→人事データの分析から、経営の意思決定に貢献することを目的とした基礎プログラムです。

人事で繋ぐ、日本と世界

GHRアカデミーで世界基準のグローバル人事を体系的に学び、GHR-CONNECTIONで専門性を継続的に磨き、世界人事会議でグローバルな対話を実現する。HRAIは日本におけるグローバル人事のHUBとして学びと実践、そして世界とのつながりを支え続けます。

◾️◾️◾️是非こちらのコラムもご覧ください!◾️◾️◾️

華園ふみ江

一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表

世界の人事資格は「知識証明」から「経営参画能力の証明」へ

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