世界の人事資格の現状(2026年版・最新版) 前編 〜グローバルで「人事プロフェッショナル」と認識される人事資格とは〜
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2021年5月に発表したコラム「人事の資格の重要性〜世界の人事資格事情https://hr-ai.org/new-column/210519/」 ではアメリカやイギリス、インド、中東など世界各地域で認識されている主要な人事資格を紹介し、専門知識としての人事資格の価値について考察しました。
当時はまだ「資格はキャリアの助けになる」という視点が中心でしたが、あれから数年、世界の経営環境や人的資本経営の要請は大きく変わっています。
本コラムでは、最新の世界の人事資格の状況や報酬データを通じて、人事プロフェッショナル像の進化と今後求められる役割を改めて問い直します。
世界の人事資格は、
- グローバル共通言語として通用する資格
- 地域・国家単位で制度化された資格
- 専門領域特化型資格(報酬・L&D等)
に大別されますが、
近年はここに 「人的資本経営」「People Analytics」「経営参画型HR(CHRO/HRBP)」 を前提とした新しい資格体系が加わりつつあります。
世界の主要人事資格一覧(2026年時点)
| 地域 | 発行団体 | 資格・認定名 | 主な対象レベル | 特徴・位置づけ |
| 🌍 米国中心・グローバル | SHRM (US) | SHRM-CP / SHRM-SCP | 実務〜戦略 | 世界で最も認知度の高いHR資格の一つ 理論・独自のケーススタディー中心 |
| 🌍 米国中心・グローバル | HRCI (US) | PHR / SPHR / GPHR | 実務〜グローバル | 試験重視・知識体系が明確 |
| 🇬🇧 英国・欧州中心+アジア | CIPD | Level 3 / 5 / 7 + Chartered | 初級〜上級 | 資格+会員制度の二層構造 |
| 🇨🇦 カナダ | CPHR Canada | CPHR | プロフェッショナル | 国家標準に近い位置づけ |
| 🇦🇺 豪州 | AHRI | APC(Practicing Certification) | 実務〜戦略 | 実務能力・行動評価重視 |
| 🇸🇬 シンガポール | IHRP | IHRP-CA / CP / SP | 初級〜上級 | 国家主導の人事資格制度 |
| 🇭🇰 香港 | HKIHRM | Professional Membership | 実務 | 会員グレード型 |
| 🇿🇦 南アフリカ | SABPP | CHRP等 | 実務〜戦略 | HR職能登録制度 |
| 🌍 専門領域 | WorldatWork | CCP® / GRP® | 報酬専門 | 報酬・Rewards特化 |
| 🌍 専門領域 | ATD | CPTD® | L&D専門 | 人財育成特化 |
| 🌏 日本発・ グローバル | GHRアカデミー(HRAI) | GHR-Basic™ GHR-Professional™ GHR-ProAdvance™ | 実務 → 戦略 → 経営参画 | グローバル人的資本経営・People Analytics・経営視点を統合した世界基準。グローバル水準設計 |
*参考資料として当機構でまとめた情報となります。実際の資格については各団体にお問い合わせください。
GHRアカデミーの位置づけ
GHRアカデミーは、従来の人事資格が主に「人事制度・労務・オペレーション中心」であったのに対し、「人的資本経営 × データ(People Analytics) × 経営参画」 を前提に設計された、日本発のグローバル人事資格体系となります。
特に以下の点で、既存の海外資格と明確に異なっています。
- 世界基準の「グローバル人事」体系に基づいた理論
- 人的資本経営と、“企業価値”への貢献を説明できる設計
- 経営の右腕としての人事を前提としたカリキュラム構造
- 日本と世界の人事体系・背景を両立したバイリンガル知識体系
- 資格取得=ゴールではなく、経営に関与する人事人財の育成を目的
このためGHRアカデミーは、「海外資格の代替」ではなく、世界の人事資格体系をアップデートする“次世代を見据えたグローバル人事資格”として位置づけられています。
アメリカにおける人事職の最新年俸情報
― 公的統計から見る「人事という専門職」の市場価値 ―
1. 参照データについて
本セクションで使用している年俸データは、米国労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics:BLS) が公表しているOccupational Outlook Handbook(職業別展望) に基づいています。
BLSは米国政府の公式統計機関であり、賃金データは 2024年5月時点の「年俸中央値(Median annual wage)」 を使用しています。中央値とは、当該職種に従事する人々のうち「半数がそれ以上、半数がそれ以下」となる水準であり、平均値よりも実態を反映しやすい指標とされています。
2. アメリカにおける主要人事職の年俸中央値(2024年)
米国労働統計局(BLS)のデータによると、アメリカにおける主要な人事職の年俸中央値は以下の通りです。
- 人事スペシャリスト(Human Resources Specialists)
年俸中央値:72,910ドル
- 人事マネジャー(Human Resources Managers)
年俸中央値:140,030ドル
- 報酬・福利厚生マネジャー(Compensation and Benefits Managers)
年俸中央値:140,360ドル
- 育成・研修マネジャー(Training and Development Managers)
年俸中央値:127,090ドル
これらはいずれも、米国労働統計局が2024年に公表した最新の公式データに基づいています。
3. グラフ 「アメリカにおける主要人事職の年俸中央値(2024年)」

図:米国における主要人事職の年俸中央値(2024年)
出典:U.S. Bureau of Labor Statistics, Occupational Outlook Handbook(May 2024)
4. このデータが示す意味
このデータから読み取れる最も重要な点は、アメリカでは人事が明確に「専門職かつマネジメント職」として高く評価されているという事実です。
特に、人事マネジャーや報酬・福利厚生マネジャーの年俸中央値が 14万ドル前後 に達していることは、人事が単なる管理業務ではなく、経営判断に直結する専門領域として位置づけられていることを示しています。
一方で、人事スペシャリストとマネジャー層の間には大きな年俸差があり、アメリカでは 「人事でキャリアを築く=マネジメント・戦略レベルに到達すること」 が、報酬面でも明確に反映されていることが分かります。
2021→最新:米国人事の年俸(中央値)比較(参照比較)

① HR Manager(人事マネージャー)
- 2021年コラムで引用した値(PayScale:2018年データ/有資格者の中央値・TCC):$69,500
- 今回の最新値(米BLS:Human Resources Managers/2024年5月・中央値年収):$140,030
- 比較(増加幅):+$70,530(約 +101%)
出典:2021年コラムはPayScaleの集計(2018年、Median TCC)を引用しています。
最新値は米国労働統計局BLS(Occupational Outlook Handbook)の2024年5月の中央値年収です。
② HR Generalist/Specialist (人事ジェネラリスト/スペシャリスト)※近似比較
- 2021年コラム(PayScale:2018年/有資格者の中央値・TCC):$54,500
- 今回の最新値(米BLS:Human Resources Specialists/2024年5月・中央値年収):$72,910
- 比較(増加幅):+$18,410(約 +34%)
注:BLSは「HR Generalist」という単独職種で統計を出さず、近い職種群として「Human Resources Specialists」を参照しています。そのため “近似比較”となります。
なぜアメリカではCHROの年収が「億超え」になるのか
― 年俸ではなく「総報酬(Total Rewards)」で見るべき理由 ―
1. CHROは「人事上級職」ではなく、「経営幹部」
アメリカでCHRO(Chief Human Resources Officer)を語る際に重要なのは、CHROが一般的な「人事マネジメント職」の延長ではなく、上場企業では経営幹部(Executive-C Suites)として扱われるケースが多いという点です。
そのため、CHROの報酬は「年俸(Base Salary)」だけでなく、株式報酬や賞与を含む総報酬(Total Rewards)で評価されます。ここが、日本で想定されがちな「年俸=年収」という理解と大きく異なるポイントです。
2. CHROの総報酬は“数百万ドル”が現実です
上場企業役員報酬の分析を行うEquilarのレポートでは、CHROの総報酬が明確に「数百万ドルレンジ」になることが示されています。
例えば、Equilarの分析では、Top 50 CHROの2024年の総報酬中央値が 420万ドル($4.2M) とされています(株式報酬が最大構成要素であることも示されています)。
また、別のEquilarレポートでは、Equilar 500におけるCHROの2024年の総報酬中央値が 240万ドル($2.4M) と整理されています。
つまり、アメリカではCHROの報酬は、一般の人事職統計(例:BLSのHuman Resources Managersなど)とは別次元の、「役員の総報酬」水準で議論されるのが自然です。
3. 「億超えが多い」と言える理由(ただし“総報酬”として)
アメリカのCHROは、年俸ではなく株式報酬を含む「総報酬(Total Rewards)」で評価されることが多く、上場大企業では総報酬が数百万ドル規模になる分析もあります。その結果、円換算では“億超え”が珍しくない階層に入ります。
(出典:EquilarによるCHRO報酬分析:2024年のTop 50 CHRO総報酬中央値 $4.2M、Equilar 500のCHRO総報酬中央値 $2.4M)
4.なぜ株式報酬がここまで大きくなるのか
CHROの総報酬で株式報酬の比率が大きくなる背景には、アメリカの上場企業では経営幹部の報酬設計が、短期の年俸よりも 中長期の企業価値(株価)と連動するように設計されていることがあります。
その結果、CHROは「人事の責任者」であると同時に、人的資本の戦略を通じて企業価値へ貢献する経営の中核人財として評価され、報酬も経営幹部水準になりやすいのです。
世界の人事資格はいま、どこへ向かっているのか
― アメリカの年収データとCHROの報酬から見える「人事の進化」―
人事資格を取得すると、何が変わるのでしょうか。それは単に知識が増えることでも、肩書きが増えることでもありません。世界ではいま、人事資格は「経営に語れる人事であるかどうか」を示す指標へと進化しています。
特に世界では、人事は明確に専門職かつ経営職として位置づけられ、アメリカではCHRO(Chief Human Resources Officer)は経営幹部の一員として評価され、年俸ではなく株式報酬を含む総報酬(Total Rewards)として、円換算で「億超え」が珍しくない水準に達していることをお話ししました。
人事資格の意味が、いまどのように変わっているのかについては後編で整理していきます。

華園ふみ江
一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表