米国流のDEIが主流ではない、世界のDEI事情

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近年、世界中の企業経営においてダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の重要性が広く認識されるようになりました。東南アジア、中国、韓国、中東、アフリカなどの国々でも、それぞれの社会背景に基づいたDE&Iの取り組みが進められています。一方で、米国では一部の州でDE&Iの政策が見直される動きが出ており、世界各国の対応は二極化しているのが現状です。

各国のDE&Iの現状

東南アジア

東南アジアは、多民族・多宗教国家が多く、DE&Iの推進が重要視されています。シンガポールでは、多様性を尊重する国家政策が整備されており、企業も積極的にDE&Iの施策を導入しています。インドネシアやマレーシアでは、宗教や民族間の公平性を確保する政策が進められています。

中国

中国では、女性の社会進出が進み、企業の管理職に占める女性の割合も増加しています。しかし、障がい者雇用やLGBTQ+の権利保護などに関しては、依然として課題が残っています。政府主導の政策が強い影響を持つため、企業による独自のDE&I施策には一定の制約があるのが現状です。

韓国

韓国では、従来の年功序列文化や男性中心の社会構造がDE&I推進の障害となるケースもあります。しかし、グローバル企業や若年層の意識変化により、多様性の受容が進みつつあります。特に女性のキャリア支援や障がい者雇用の取り組みが増えてきています。

中東

中東地域では、国によってDE&Iの進展状況が大きく異なります。例えば、UAEやサウジアラビアでは、女性の社会進出が近年大きく前進しましたが、LGBTQ+の権利に関しては制約が多いのが実情です。

アフリカ

南アフリカではアパルトヘイトの歴史を背景に、企業における人種の多様性確保が求められています。他の国々でも、ジェンダー平等や障がい者の権利向上に向けた取り組みが進んでいますが、地域ごとの課題が多様であるため、一律のアプローチは難しいのが現状です。

米国のDE&I廃止政策の影響

近年、米国の一部の州ではDE&Iに対する反発が強まり、企業におけるDE&I推進の予算削減や方針転換が見られます。これは、ポリティカル・コレクトネスの行き過ぎや、特定のグループに対する優遇措置が逆差別につながるとの懸念が背景にあります。この動きは、グローバルなDE&I戦略にも影響を与えており、企業は各国の状況を踏まえた柔軟な対応を求められています。

日本に求められる独自のDE&I

日本でも、近年DE&Iの推進が注目されています。しかし、日本の社会文化や企業文化を考慮した独自のアプローチが求められます。例えば、

  • ジェンダー平等:女性管理職の割合向上に向けた施策の強化
  • 高齢者の活用:超高齢社会に対応し、多様な世代の労働力を活用する仕組み作り
  • 外国人労働者の受け入れ:人口減少を補うための環境整備とインクルージョンの強化
  • 障がい者の雇用促進:単なる法定雇用率の達成だけでなく、実際の職場環境改善

また、日本では「均一性」や「調和」を重視する文化が強く、米国型の多様性推進とは異なるアプローチが必要です。単に欧米の施策を取り入れるのではなく、日本の企業文化に合った形でのDE&I推進が求められます。

まとめ

世界各国でDE&Iの推進が進む中、米国では一部でその見直しが進んでおり、グローバル企業は多様な対応を求められています。日本においても、単に欧米の施策を模倣するのではなく、日本の社会や企業文化に即した独自のDE&I戦略を策定することが不可欠です。日本の未来を支えるためのDE&Iをどのように構築するかが、今後の重要な課題となるでしょう。

ポリティカル・コレクトネス(Political CorrectnessPCとは、特定の人種、性別、宗教、障がい、性的指向、文化などの属性に対する偏見や差別を防ぐために、言葉遣いや表現を慎重に選ぶ姿勢や考え方を指します。これは、多様性を尊重し、誰もが安心して発言できる社会を目指す理念の一環として広まりました。

例えば、従来使われていた差別的または蔑視的とされる言葉をより中立的で包括的な表現に置き換えることが、ポリティカル・コレクトネスの実践の一例です。例えば、「障がい者」を「身体的・精神的な多様性を持つ人」と表現することや、「清掃員」を「環境整備スタッフ」と言い換えるといった形です。

ポリティカル・コレクトネスとDE&Iの関係

ポリティカル・コレクトネスはDE&Iと密接に関連しており、インクルーシブな職場や社会の構築において重要な役割を果たします。言葉の配慮は重要ですが、企業や組織は表面的な遵守にとどまらず、実質的な包括性の向上に向けた取り組みを推進する必要があります。これらの要素をバランスよく取り入れることが、DE&Iを世界的に成功させる鍵となります。

華園ふみ江

一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表

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