ジョブ型 でつまずく典型的誤解 についての解説とアドバイス 第三弾
Q&A:HRAIからの回答
Q5)多能工
日本は中小企業が多く、何でもできる多能工が尊ばれます。ジョブディスクリプションで仕事を定義しすぎるとこうした多能工が働きにくくなるのではないでしょうか。
A5)
実は多くの欧米企業では生産性のさらなる強化のために、特に90年以降、製造業を中心に多能工を積極的に育成しています。
この概念は70年代からよく見られている「Job enlargement(職務拡大)」の延長線上にありますので、ことさら新しい考え方ではありません。前述した通り、J Dは、作業説明や指示書ではなく、その職務の役割と成果を明文化したものであり、正にこの「職務拡大」を可視化するという目的もあります。
このようにそのジョブで何を求められているか、成果物は何であるか、を基準として従業員一人一人が自ら考え、ジョブのやり方を任せられて、創意工夫して「多能工化」を実現してきたのがジョブ型人事の特徴です。
アドバイス)
一方、日本型の「多能工化」は前述の通り、会社の辞令で職務を転々とするものです。「多能工化」を実現する為の人事施策として「ジョブ型」または「メンバーシップ型」、何がより有効であるのかは組織によっても異なることでしょう。
これもやはり、経営レベルでの検討、決断が必要な重要なテーマです。
Q6)新卒採用
日本の大学文系は専門性を突き詰めているわけではないので、大卒後にすぐ就職できない人も増えると思います。社会の安定性が損なわれる可能性はどうお考えですか。
A6)
職務/部門別採用をしている企業でも、新卒の学生にいきなり実務での専門能力を期待しているわけではありません。新卒採用で部門別採用制を既にとっているグローバル企業でも、ゼロから基本的ビジネススキルも専門スキルを学べる仕組みを持っているのが通常です。
ですから、今後日本の学校を卒業する学生の方も、ジョブ型導入が就職難の元凶となる、という様な心配をする必要はないでしょう。
アドバイス)
ただ、今は企業に就職しても専門性を磨ける組織が日本では少ないと言えます。また学生がビジネスの専門性を学ぶ機会もあまりありません。今後日本の企業でもジョブ型がより浸透していけば、その過程で大学教育が変わっていくことが考えられます。
世界の仕事やビジネスはより一層高度な専門性を求めているのは明白です。
日本の組織がこの様な国際競争の中で発展を続ける為には、一人一人の専門性が今後キーになっていくのではないでしょうか。そしてその根底にはやはり専門的教育が必要です。
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華園ふみ江
一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表
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