「第62回フィリピン人事会議・PMAP年次会議(62nd PMAP Annual Conference)」参加レポート

セブ島 NuStar Convention Center にて、PMAPの歴代プレジデントとの記念撮影
テーマ:「UNLEASH — Empowerment for the Greater Good(解き放て、人と組織の力をより大きな善のために)」
2025年10月21日から24日にかけて、フィリピン・セブ島で開催された「第62回PMAP年次会議(62nd PMAP Annual Conference)」に参加しました。
PMAP(People Management Association of the Philippines)は、1956年に設立されたフィリピン最大の人事団体であり、企業・教育・政府など幅広いセクターを横断して、リーダーシップ開発と人的資本経営を推進しています。
会員数は1,800を超え、アジア地域でも高い影響力を誇る団体です。
▶公式サイト: https://www.pmap.org.ph
🇵🇭 セブ島で感じたアジアの「HRリーダーシップの再定義」
3日間にわたってフィリピンのセブ島NuStarコンベンションセンターにて開催された、第62回PMAP(People Management Association of the Philippines)年次会議には、アジアから1000人を超える参加者が集いました。
PMAPはアジアでもっとも影響力のあるHR団体のひとつで、今年のテーマは3日間にわたって、企業のCEO・CHRO・HRリーダーが一堂に会し、「Purpose(存在意義)」「Empowerment(自律と信頼)」「AI×Humanity(AIと人間性の融合)」という3つのキーワードを中心に熱い議論が交わされました
変革のキーワード:「エンパワメントー」は“人の可能性を信じる“ことにあり
初日の基調講演では、RCBCのLito Villanueva氏が「エンパワーメントとは、単なる権限委譲ではなく、人の可能性を信じる“信頼の投資”である」と語り、経営における人間観の根本的な再考を促しました。この“信頼”をどう組織文化に根付かせるか——これこそが、AI時代のリーダーシップの本質だと強く感じました
People × AI の交差点:「HRはAI時代に準備ができているか?」
注目セッション「Is HR Ready for Its AI Moment?」では、インド・シンガポール・フィリピンのテック企業が登壇し、AIが採用、学習、コーチングをどう変えているかを具体的に紹介しました。
特に「AIは人を代替するのではなく、“個の潜在力を可視化し、成長を支援するツール”」という視点が強調されており、HRAIの理念と深く共鳴しました。

HRTX社CEOとASEAMETRICS社CEOと講演後の記念撮影
「DEIはDIY (Do It Yourself) で」 — 自走型インクルージョンへの転換
最終日のキーノート「DEI but Make it DIY」は、多くの参加者の心に響くセッションでした。大規模予算がなくても、日常の対話や仕組みの中に多様性・公平性・インクルージョンを実装できる——という現実的かつ希望に満ちたアプローチが提示されました。日本でも「制度型DEI」から「行動・文化型DEI」への転換が求められており、この“DIY”の考え方は今後の指針となるでしょう
「生きがい(Ikigai)」
日本からの初参加者として、歴代の20人のPMAPプレジデントの皆様と3日間を共に過ごす貴重な機会をいただきました。それぞれの方が国の人事界を牽引してこられたリーダーでありながら、謙虚で温かく、「人を大切にする」という信念を体現されている姿に深く感銘を受けました。
休暇には「日本へ毎年行っています」とのお声をたくさんいただき、またビジネスでも日本企業とつながりのある方も多く、フィリピンが真に親日的な国であることを肌で感じました。
さらに印象的だったのは、「生きがい(Ikigai)」という日本語がそのまま使われ、人事やウェルビーイングの文脈で大切に語られていたことです。
プレゼンテーションでも“自身の生きがいの探究”が取り上げられ、日本発の価値観がフィリピンの働き方や人生観にも息づいていることに、深い感動と新しい発見を覚えました。
会場全体には、エネルギーと発展の空気が満ちており、人事の進化はすでに日本を超えていると感じました。人を信じ、データと感性の両面から組織を変える。その熱量と実践力が、まさにアジアの成長の原動力です。
HRAIとしても、この経験を通じて日本とフィリピンを「人事」でつなぎ、
世界基準のグローバル人事教育と人的資本経営を世界へ発信する活動をさらに加速してまいります。

「生きがい」を尊ぶ、親日家のフィリピンHRリーダーと記念撮影
セブ島で実感した「アジアHRの共創」
会議全体を通じて感じたのは、アジア各国のHRが“競争”ではなく“共創”の時代に入っているということです。「Purpose」「Trust」「Inclusivity」を軸に、各国が異なる経済・文化背景を超えて学び合う。
HRAIとしても、このような国際的HRネットワークと連携し、日本発の人的資本経営・人事教育を世界へ発信していく重要性を再確認しました。
セブの市長にもご挨拶させていただきました。
結びに
「エンパワメント」とは、他者を信じる勇気であり、未来を託すリーダーシップの形です。本会議での学びを通じて、HRAIが掲げる「ピープルファースト」の理念とヒューマンセントリック(人中心)× データ駆動型の両輪を実装したグローバル人事の重要性が、アジアの潮流の中で確かな存在感を放っていることを実感しました。
この経験を第3回世界人事会議(25GHR Tokyo)にもつなげ、アジアとの架け橋をさらに強めていきます。
また、世界基準のグローバル人事教育と資格の普及、並びに日本的グローバル人的資本経営を世界へ発信する私どもの使命を改めて感じました

華園ふみ江
一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表