「人事哲学」 HR Philosophy 日本でまだ語られていないこと〜2024年から最も大事なこと。 第三弾 人事哲学〜アメリカでは
1) 全てはPhilosophy (フィロソフィー)から
SHRMは、全世界に32万5千人以上の会員を持つ、人事職業協会ですので、人事専門領域についての情報発信、啓蒙という意味では世界で最も権威があると言っても過言ではないでしょう。また、世界最大の人事職業協会ですので、人事プロにとって最も影響力があるとも言えるでしょう。
そのSHRMの会員専用サイトには、Philosophy (フィロソフィー) は随所にキーワードとして登場します。 それは、人事哲学 (HR Philosophy)から派生して、人事プロとしての哲学、人財獲得の哲学、報酬の哲学、と全ての人事活動においてのPhilosophy (フィロソフィー) の重要性が語られています。
「戦略」の前にまず、Philosophy (フィロソフィー) を持っている事、これは大前提な訳です。
2) 哲学の重要性に既に目覚めている米国先進大手企業
2023年12月日本でも以下のニュースが報じされていたのはとても興味深く重要な事であると感じています。人事領域だけではなく、経営哲学企業理念・企業倫理においても哲学が取り入れられているアメリカの動向について学ぶことも参考になります。
海外の先進企業はなぜ哲学者を雇い始めたのか? 「哲学では飯は食えない」はもはや過去のこと
https://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-718734.html?page=5
当記事からの引用:
「インハウス・フィロソファー」というあり方の功罪があります。「インハウス(企業専属)」であることにより、哲学(者)が批判的な機能を果たさず、自社やクライアントの正当化に悪用されてしまう危険性があるからです。
海外での動向に対して、日本企業はどのように哲学や倫理学を取り込んでいくか、よく検討していく必要があります。私自身は、特定の専門家が助言・監修するかたちより、自社が大切にする規範や理念を掘り下げ浸透させていく、日本企業に適した哲学実装が望ましいと考えています。
3) マッキンゼーにおける 「人事哲学」
2015年発行のマッキンゼー季刊誌では、既に「Toward a new HR philosophy〜新たな人事哲学に向けて」と題したコラムを発表しています。
以下、当コラムから一部抜粋し要約翻訳
アメリカの現状としては、多くの企業が人事部機能を、管理中心で、戦略にはほとんど関わっていないと見ているでしょう。
無論、HRのリーダー職にいる人たちは経営のテーブルにつこうと機会を伺っているでしょうし、人事はより戦略的で重要であるとの評価を受けるために人事部がしばしばより大きな責任を引き受けようとしています。
グローバル企業で多く見られる現象が、経営幹部や管理職は、自分の仕事は人を管理することではなく、財務結果を出すことであると考えていて、人財管理をやりがいのない仕事とみなす場合が多い。 そのような場合人事部門が「身を乗り出す」つまり、人事がその役割や責任を引き受け、問題を解決し脚光を浴びるという場面をよく目にします。
しかし、このアプローチは誤った考え方に基づいています。それは経営者にとっても、会社全体にとっても悪いことです。人事部が自らをマネージャー、仲介者、人財育成者と見なすと、マネージャーと従業員をさらに引き離し、結果対人の二分法を強化します。多くの人事部門は会社の他の部門を「ビジネス」部門と呼んでいますが、自分たちをそのビジネスの中核部分として認識していません。
人事部の本質的な役割とは:
⚫︎マネージャーが人財を管理することを支援する
⚫︎リーダーを育成する
⚫︎人財管理をマネージャーの判断に委ねる
⚫︎報酬をコントロールするのではなく、よきコンサルタントになる
⚫︎対立への対処法を提供する
⚫︎ピープル・ピープル
4) 「人事哲学」〜アメリカの実際
上述のマッキンゼーのコラムは2015年に発表されており、既に数年を経た現在ではアメリカにおける人事機能はより戦略的なものに進化しています。
また、今日では、教育期間・IT企業・医療機関など、「人事哲学」を定義し、公表している組織も増えています。
UCバークレー校
https://hr.berkeley.edu/hr-network/central-guide-managing-hr/managing-hr/appendix/philosophy
テクノロジーバリューソリューション社
https://www.technovalue.in/hr-philosophy
ラミバードメディカル
5) まとめ。日本と世界を繋いで「人事哲学」を共に考えましょう。
「人事哲学」という言葉が日本では語られることがまだほとんど無いと言っても過言ではないでしょう。
2019年から、私はこれからの人事に必要なことは
1)「人事哲学」
2)「人事戦略」
3)「人事の数字」
の3つで、かつ、この1)〜3)の順番で考えられるべきであるとお話ししています。
今、日本の人事が自らの気づきで変わろうとしています。しかしそれが世界から全く孤立した独自の形での変革・進化では意味がないと思っています。
これほどまでに、全てがグローバルで繋がって、同時進行的になった世界を未だ私たちは知りません。また、これまで「日本の人事は独特だから」という考えが一般的で、それは多くの場合日本の人事を管理的役割に限定し、長期に渡り、真剣に「経営マター」としての人事を考えないことを正当化する言い訳に使われることも多かったのではないでしょうか。
「人事は独特です」それは「日本の人事が独特」なのではなく、「組織ごとに独特」な訳ですが、一方で人事の基礎には世界共通のものがあります。
「日本は独特だから」「ここは日本だから」は、このグローバルな世界においては既に言い訳であり、多くの人がその言い訳を疑問に思い始めています。
経営を哲学から考える潮流がグローバルな先進企業である中で、グローバルなビジネスをリードするには「人事哲学」がこれからますます重要になり、「人事哲学」のない「人事戦略」は、グローバル競争において、企業の競争力を低迷させる大きな一因になっていくことでしょう。
2023年日本で初めてのグローバルレベルの「人事会議」である「世界人事会議」を開催しました。3日間で述べ500人以上が世界20ヵ国から東京の会場に集いました。
第二回「世界人事会議」は、この「人事哲学」を日本と、世界の目線から考える会議となります。ご参加いただき、一緒に「人事哲学」について考え、意見を交換してみませんか。
第二回「世界人事会議」の詳細はこちらより
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