HR とAI の融合について考える 3回シリーズ〜第3回 「A Iの光と闇〜世界の人事の潮流」
AIの人事での活用には多くの利点がありますが、同時に課題や懸念も存在します。以下に、その「光」と「闇」について詳しく説明します。また、世界の人事ではすでにA Iの活用が浸透しています。最後に実例も紹介しながら解説します。
光(利点)
1.効率化と時間の節約
⚫︎自動化: AIは採用プロセスや社員評価などのタスクを自動化し、人事部門の負担を軽減します。
⚫︎迅速なスクリーニング: 大量の応募書類を迅速にスクリーニングし、最適な候補者を短時間で選定できます。
2.データ駆動の意思決定
⚫︎予測分析: AIはデータを解析し、従業員のパフォーマンスや退職リスクを予測することで、戦略的な意思決定をサポートします。
⚫︎パフォーマンスの評価: 過去のデータに基づいて客観的なパフォーマンス評価を提供し、バイアスを減少させます。
3.パーソナライゼーション
⚫︎キャリア開発: 従業員のスキルや興味に基づいて、キャリアパスやトレーニングプランを個別に提案できます。
⚫︎エンゲージメント: 従業員のニーズやフィードバックをリアルタイムで収集し、満足度向上のための施策を提供します。
闇(課題・懸念)
1.バイアスと公平性の問題
⚫︎アルゴリズムの偏り: AIはトレーニングデータに基づいて学習するため、元データが偏っている場合、結果も偏る可能性があります。これにより、不公平な判断が下されるリスクがあります。特にバイアスはこれまでの社会的な不公平性・偏り・偏見などが含まれる情報を踏襲しているため、最も注意が必要です。
⚫︎透明性の欠如: AIの判断基準が不透明であるため、なぜそのような結果が出たのかを説明するのが難しい場合があります。つまり、これまでのバイアスが反映された応募書類の選考などが行われていても断定・発見することが容易でない場合があります。
2.プライバシーとデータ保護
⚫︎個人情報の取り扱い: 大量の個人データを取り扱うため、データ漏洩や不正使用のリスクがあります。
⚫︎監視社会の懸念: 従業員の行動やパフォーマンスを常に監視することで、プライバシー侵害の懸念が高まります。
3.倫理的・法的な課題
⚫︎意思決定の責任: AIによる判断に誤りがあった場合、その責任は誰が負うのかという問題があります。
⚫︎規制の遵守: 各国の労働法規やプライバシー法に適合する形でAIを活用する必要がありますが、その遵守が難しい場合があります。
世界の人事での活用例
1) 採用(タレント・アクイジション)
昨今、毎日のようにHRとAIの癒合についてのセミナーが開催されています。先日は在日米国商工会議所(ACCJ)でも会員向けにセミナーが開催されました。HRにおいて先進的な取り組みを行っている企業から事例の発表が行われました。
採用の初動〜採用通知を行うといった過程を9つの段階があり、そのうち、5つの段階については既にAIが単独で行っている。
人間が行っているのは以下
初動(採用の決定)・社員からの紹介プログラム・採用面接・採用通知
AIのみで行っているのは以下:
JD作成・空きポジション管理・候補者の確保・募集広告作成・
これらの過程の順番は、初動と最終の3段階が人間で、その間の5段階はAIのみで行っているということです。
2) 育成(タレント・ディベロップメント)
私共HRAIでは、毎月HRAIオンラインサロン(受講者の会)の活動を行っています。先月は日本の最大手の製薬会社の現役HRBP(人事ビジネス・パートナー)がスピーカーとして登壇し、グローバル化した組織の紹介、グローバル人事の取り組み、そしてAIの活用例について発表してくれました。
グローバル化においては日本企業の中でも際立って進んでいる組織であることが理解でき、特に人事の拠点は米国に置かれているというのも特徴的でした。
AIの活用では、「キャリア・マッチング・ラーニング」が導入されており、自身のスキル、将来のキャリアも目標などのデータを自分で入力することにより、スキル分析・ラーニングプログラムの推奨などが行われているそうです。
(例:Gloat, Career Navigatorなどのプラットフォーム)
このプログラムは自身のキャリア分析情報や自分が目指すキャリアプランの精度が高いほどより効果的に利用できるので、やはりグローバル人事の土壌でより活用できるシステムだと感じます。
しかしながら、これからジョブ型やスキル型を推進していく日本企業でも、社員一人一人がまずスキルの自己分析から始める必要があると考えると、「キャリア・マッチング・ラーニング」AIの導入がメンバーシップ型からの一早いトランスフォーメーションの実現を促進するかもしれません。
まとめ
AIの人事活用は、多くの利点をもたらし、企業の効率化や従業員のエンゲージメント向上に寄与します。しかし、同時にバイアスやプライバシー保護、倫理的な問題に対する慎重な対応が求められます。これらの課題を適切に管理し、透明性と公平性を確保することが、AIを人事で活用する上での成功の鍵となります。
結論として、人事哲学なき人事でのA I導入はその「闇」が深くなるかもしれません。
人事哲学については、2024年開催の「第二回世界人事会議」のテーマとしていますが、人事を考える上で土台をなすものです。
「人事哲学」とは、どの様な人財(ヒューマンキャピタル)を組織に獲得し、どの様に人財に活躍してもらうのか、ということを明確に定義することである。
人事哲学は組織の文化を形作り、すべての人事政策、プロセス、プログラムの基盤となります。それにより、組織内の各種の決定が一貫性を持ち、従業員と組織の両方にとって最良の結果を導き出せるようにします。人事哲学は組織のリーダーシップによって形成され、全従業員に共有され、理解され、実践される必要があります。
世界基準で「人事哲学」を考える場が東京で提供されます。
今年2024年11月6日から8日の日程で開催される「第二回世界人事会議」では、日本ではまだあまり語れることのない「人事哲学」をテーマに、世界の人事プロフェッショナルが東京の会場に集い共に考える貴重な機会を皆様に提供いたします。
https://hraionline.wixsite.com/24ghr
人事に国境はなく、組織が持つべきは「人事哲学」
「ヒューマン・セントリック(人中心)」はアプローチ
X
「データ・ドリブン(データ駆動型)」なプロセス
=
組織の発展に直接寄与する人事
日本の哲学の重要性を今ここで顧みましょう。
世界はますます相互につながり、国境を越えた交流やコラボレーションが日常化しています。情報や技術の進歩により、地球上のあらゆる場所から人々が直接コミュニケーションを取り、アイデアや文化を共有することが容易になりました。
経済的には、グローバルな市場が企業や個人に新たな機会を提供する一方で、競争も激化しています。国境を超えて技術や労働力の流動性が高まり、組織は必然的に世界中でのビジネス展開を追求し、優秀な人財獲得の獲得を行なっています。
DE&I(ダイバーシティ・エクイティー&インクルージョン)は全ての組織において最重要課題となっています。
DE&Iでは、人々の多様な文化やバックグラウンドを尊重し、それを組織や社会全体の利益に活かすことを重要です。さまざまな文化を尊重することは、個々の異なる経験や視点を理解し、組織内での多様な人材の力を最大限に引き出すために不可欠です。
多様性の第一歩としては、まず自らを客観的に理解し、正しく伝えていくこと。
私たちは、原点として「日本の哲学」を今一度私たちは顧み、また世界に発信・共有してく必要があるのではないでしょうか。
日本の組織がこれまで培ってきた価値観(品質への追求、精密な技術、協調性やチームワークの重視、継続的な改善への取り組み)は常に世界から注目されています。
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