人事の資格の重要性〜世界の人事資格事情
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世界における人事の資格
人事の資格の現状についての最近のHRAIでのリサーチによると、アメリカ、イギリス、インド、アラブ首長国連邦といった世界の各地域を代表する国々で認識が最も認識されている人事の資格は、アメリカの組織であるHRCI (The HR Certification Institute) が認定する“PHR”, “SPHR” と、 SHRM (The Society for Human Resource Management) が認定する“SHRM-CP”, “SHRM SCP” (HRCIの資格は元来SHRMの資格でHRCIはその認定機関という位置付けでした)です。
いずれもHRでの実務経験年数などの受験要件があり、資格試験に向けてもかなり集中的な勉強が必要です。
イギリスではCIPD (The Chartered Institute of Personnel Development)が認定する”CIPD Qualification”もありますが、こちらは受験以外に経験評価でも取得が可能ですので、経験と受験勉強そして資格試験合格が必須のCertificationsとは少々異なると言えます。
人事の資格の価値
それでは、世界的に認められている主要な人事の資格を認定しているアメリカにおける人事の資格の価値について検証してみたいと思います。
1つ以上の人事の資格を保持する人事プロフェッショナルの割合は2008年から2018年の10年間のデータによると2011年の44%を頂点として、2018年では36.4%となっています。
取得者が最も多い人事の資格
2018年時点での人事の資格の内訳を見てみると、以下の通りで、HRCIとSHRMの資格が最上位を占めています。
これは前章で行なったアメリカ、イギリス、インド、アラブ首長国連邦のサーチ結果と一致しています。
Certifications | % of HR Pros |
Has at least one certification | 36.4% |
Professional in Human Resources (PHR) | 16.9% |
SHRM Certified Professional (SHRM-CP) | 15.4% |
Senior Professional in Human Resources (SPHR) | 7.9% |
SHRM Senior Certified Professional (SHRM-SCP) | 5.3% |
Associate Professional in Human Resources (aPHR) | 0.7% |
Global Professional in Human Resources (GPHR) | 0.3% |
Certified Compensation Professional (CCP) | 0.2% |
California Senior Professional in Human Resources (SPHR-CA) | 0.1% |
California Professional in Human Resources (PHR-CA) | 0.1% |
Certified Professional Coach (CPC) | 0.1% |
人事のキャリアアップと人事の資格の関連性
下のチャートを見ると一目瞭然ですが、人事プロフェッショナルとしてのポジションが高くなるほど人事の資格保有率が高くなっていきます。
人事アシスタントでは5.2% でこれが人事マネージャーでは35.5%と6倍近くなり、最高位CHROでは 55.7%と10倍以上の取得率となっています。
SHRM-CPもHRCI-PHR共に人事での実務経験年数が受験要件にありますので、経験年数の長短も資格取得者の率に影響はあると思われますが、人事マネージャーとCHROでは1.5倍以上の取得率と非常に大きいところを見るとやはり、人事プロフェショナルとして確実にキャリアをステップアップさせていく為に資格の取得が有効であること、そして資格取得つまり職務の知識の取得は自己投資としてとても有効で、投資回収が良いことを数字から読み取ることができます。
人事の資格取得による給与アップ
人事の資格の価値は益々上がっています。
2008年から 2018年の10年間で人事プロフェッショナルにとって人事の資格の益々価値あるものとなっています。人事の資格は給与そしてキャリアアップの両面において有利に働いています。
2008年での有資格者VS無資格者では、給与が有資格者の方が17%高く、2016年のピーク時には有資格者の給与は無資格者に比べて40%高く、2018年においても31.6%高いという結果が出ています。
Pay Boost Associated With Certification Holders
(Based on Median TCC)
人事の資格と給与水準の関連性
人事の資格は、エントリーレベルからミッドキャリア、そしてディレクターレベルまでは給与アップに大きく影響しますが、ディレクターレベルに達すると給与アップに必ずしも直結しないという集計結果となっています。
しかしながら、一旦最も高いレベルに達すると、資格保持者であっても資格を更新する必要性が低くなるので資格を更新していない為といった要因もあると推察できるでしょうし、またCHROのポジションは字かなり長期間のキャリア年数を経ている事情から、過去(20年から30年以上前)の人事の資格の浸透度といった要因も影響していると思われます。
2018年のデータによると有資格者と無資格者を比較すると有資格者の給与水準が人事マネージャーでは15.8%高く、人事ディレクターでは12.5%高くなっていますが、CHROでは-11.9%となっています。
Certifications | % Pay Boost | Any Certification | No Certification |
Human Resources (HR) Manager | 15.8% | $69,500 | $60,000 |
Human Resources (HR) Administrator | 15.5% | $50,000 | $43,300 |
Human Resources (HR) Director | 12.5% | $90,000 | $80,000 |
Human Resources (HR) Assistant | 11.6% | $39,500 | $35,400 |
Human Resources (HR) Generalist | 9.0% | $54,500 | $50,000 |
Vice President (VP), Human Resources (HR) | -4.1% | $140,000 | $146,000 |
Chief Human Resources Officer (CHRO) | -11.9% | $163,000 | $185,000 |
【人事の資格の重要性とこれから】HRAIが提唱すること
「資格はパスポート」であると私は提唱しています。
あなたが世界的に認められたパスポートを保持していれば国境(ボーダー)を容易に超えて活動ができます。
しかもビザ免除などにより入国に際してビザが不要なケースも多く、入国審査はより容易です。
入国時には特にあなたについての情報や入国資格について質問されることもなく国境(ボーダー)を超えていくことができます。
まさしく世界基準の人事の資格とはそういうものだと思います。
つまり、ボーダーを超えることがよりスムーズになり「人事の専門家」としてより多くの門戸が開放されるということです。ただし、ボーダーを超えた先で自分が何をするのか、何ができるのか、受け入れられるのか、がより重要です。とはいえ、すんなりボーダーを超え事ができるのですから、ボーダーを超えた先の事に集中すればいいのだとも言えます。
グローバルな活動にパスポートが必然のように、グローバルなビジネスの世界では専門職であることを証明する職業資格も同じように重要であると言えます。
もちろん人事の資格を取得しなくても人事の仕事はできますし、努力をして評価されてキャリアアップもしてくことが可能です。
今回アメリカ、イギリス、インド、アラブ首長国連邦で認知度の高い人事の資格のご紹介をし、世界基準の人事の資格を認定している組織が存在するアメリカの人事の資格による人事のキャリアへの影響をより詳しくお伝えすることができました。
今回引用したPayScale社のデータは2018年までとなっており、まさにプレ・コロナ(コロナ前)の10年間についてでした。
それでは、現在のコロナ禍、そしてポストコロナ(コロナ後)のデータにはどれほどの変化が表れるでしょうか?とても興味深い数字になるのではないでしょうか。
現在もなお、全世界を巻き込んで強制的なライフスタイルチェンジ、ワークスタイルチェンジ、仕事という概念自体のパラダイムシフトの真只中です。これほど全世界を巻き込んで同時に進行するチェンジがあったでしょうか。これは世界の人事プロフェッショナルのキャリア、人事の仕事に対する価値観に確実に大きな影響を与えていることでしょう。
あくまで私見ですが、私は2019年以降アメリカをはじめとする世界の人事の資格取得者は確実に増加していくと考えています。
日本においては、人事の資格(専門職としての人事専門知識の習得を証明するもの)についての認識はまだまだ社会に根付いていませんが、2020年から2021年は人事の夜明けとも言えるのではないでしょうか?
全ての組織において新しい働き方に沿った人事制度の再整備、リモートワークを鑑みた人事評価位制度の必要性など切迫したニーズに直面しています。人事の専門性がこれほどまでに問われ、迅速なチェンジに対応する事が人事に求められ事はこれまでありません。
HRAI人事資格認定機構では、世界基準の人事の資格として初めて、SHRMエッセンシャルズプログラムを日本語で提供し、本格的人事の資格であるSHRMクレデンシャル資格の付与を行なっております。
SHRMエッセンシャルズプログラムでは、人事の仕事の基礎を網羅し、人事の仕事の基礎知識を確立するためのプログラムです。
先にご紹介したSHRM CP、SCPなどの資格への登竜門となるプログラム並びに資格です。
世界基準で考えることが日常となった今、人事プロフェッショナルに求められるのはKSA(知識・スキル・能力)であり、それは組織を超えたKSAです。
K―知識は自分で習得するものであり、S―スキルは自ら証明するもの、A―能力は他者に認められるものです。
知識は力なりとSHRMエッセンシャルズプログラムの教材の冒頭で掲げられています。
また、学びの場では「自分は授業に遅刻してしまった」という考えを常に持って挑むのが賢明であると、著名な学者の方達は言っています。日本の人事はまさに、世界の人事の授業に既に遅刻してしまっています。取り戻すためには一刻も早くアクションを起こし、キャッチアップする緊迫感を持って学ぶ姿勢が必要ではないでしょうか。
HRAI人事資格認定機構の活動
一般社団法人人事資格認定機構(HRAI)はSHRMの日本で初めてのそして唯一の公認パートナーであるASTAR LLPが運営する人事プロフェッショナルを応援する組織です。
2021年1月より、人事の仕事の定義と運用の基礎が丸2日で学べる「SHRMエッセンシャルズプログラム」を日本語・英語で提供し、SHRMクレデンシャル資格の認定・付与を日本で行なっています。https://hr-ai.org
現在SHRM-CP, SHRM-SCPは英語での教材、受験準備コースの提供だけとなっていますが、今後HRAIでは日本語での教材、受験準備コースの開発と提供も視野に入れ目指してまいります。
今後も世界基準の人事教育と人事資格認定を日本で広めていく活動に邁進いたします。
華園ふみ江
一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表
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