これらからの人事〜2022年からの10年【4月号】ファイナンス(CFO)〜人事(CHRO)の路 CHROがこれから辿る路

アメリカで真の人事部門というは1970年代から始まったとされています。

CHROに目を移してみると、人事戦略の重要性がアメリカで問われ始めたのが1990年代で、それに伴い人事戦略を経営戦略に組み込む役割を担うCHROのポジションが2000年を境に徐々に一般的になってきました。

アメリカにおけるCFOより20年ほど遅れての登場と言えます。

日本ではやっとここ数年でCHROポジションの重要性が言われるようになり、これから導入という企業が多いでしょう。CHROがエグゼクティブチームの一員となり、人事の専門家としてエグゼクティブチームに助言をしていく必要性が叫ばれており、「戦略パートナー」としての役割を担うことが今後の日本企業の成長を左右すると言っても過言ではないでしょう。

今般の世界的なCHROを重要視する傾向は先に述べたCFO設置の社会的背景(資本家の要望)とリンクするものがあります。

ISO30414が2018年12月に「人的資本情報開示のガイドライン」として発表され、続いて2020年8月にはSECが主要な人的資本関連情報開示を義務化するガイダンスを発表しました。それに伴い2021年3月には既にドイツ銀行はISO30414に準拠した人的資源情報を開示しています。この一連の加速する動きに先立ち、SHRMは2011年に米国国家規格協会の人的資源情報開示検討委員会に参画し、その検討結果はISO30414に反映されています。

「人的資本(ヒューマンキャピタル)」とは、組織における人財のKSA(知識スキル経験)を集約したもので、これまでは「金融資本(ファイナンシャル・キャピタル)」が重要視されてきましたが、今後は「人的資本(ヒューマンキャピタル)」がより重要視されていきます。

社会的要望から、経営の中枢にCHROのポジションの設置と人的資本の責任者であり人事戦略のリーダーとしての役割が求められています。

アメリカにおける一般的なCHRO像は、人事の実務経験15年以上あり、少なくとも5年以上の人事の上級管理職での経験があるとされています。また、SHRM SCPなど人事専門家として職業資格があることが好ましいとされています。実際第一章で述べた通り、全米のCHROの約半数以上がこの資格を保持しています。

また、日本では「黒船来襲!」などと物々しく語られることもある、一連の世界の主要国における人的資本に関する情報開示を義務づける潮流を日本でも正しく理解し、対応していく必要があります。そして、人的資本を司るCHROの存在は日本の経営においてもなくてはならないものになっていくでしょう。

日本でもCHROが増えていくと、CFOの増加と共に急速にニーズを増したファイナンス・ビジネスパートナーやFP&A(ファイナンシャル計画と分析)人財と同じようにHRBP(HRビジネスパートナー)のニーズが増していきます。ここ1、2年では日本におけるグローバル外資系のみならず、日本企業でも事業部ごとのHRBP(HRビジネスパートナー)のポジションを新設する動きが目立ちます。

日本企業でのHRBP(HRビジネスパートナー)登用で特筆しておきたいのは、株式会社サイバーエージェントでしょう。2013年頃から事業部ごとにHRBPを置いているとのことで、日本で先進的な人事施策を実行しているリーダー的企業と言えるでしょう。

CHROの登用が進んでいるアメリカですが、最近Gartner社の調査ではCEOの70%が企業全体の戦略においてキープレイヤーとなっているとしているが、期待する働きをしているのは55%に留まっているとしており、またCFOの意見では更に評価は低く30%のCHROが期待する貢献をしていると答えています。https://www.gartner.com/en/human-resources/role/chro

こういった結果からも、先に述べた人的資本にかかる企業の取り組みの情報開示を求める社会的背景に背中を押されて、アメリカのみならず日本や世界中でCHROが企業戦略を本格的に担う時代は、これからと言えるでしょう。そういった意味ではこの分野ではまだまだ日本企業がキャッチアップする時間はまだある様ですが、早急な着手が必要とされているでしょう。

CFOとCHRO共に共通する重要な役割は「戦略的リーダーシップ」であり、CFOはファイナンスのCHROは人事の専門領域の戦略を会社全体の戦略に結びつけ、会社のゴール達成を確実にしていく責任を担っています。

戦略的リーダーシップに不可欠とえるのが、戦略を数字に落とし込み、数字で戦略計画を構築して、戦略の評価をしていく能力でしょう。これまで、人事と数字は無縁であるとする傾向が強くありました。しかしこれからのCHROは人的資本への説明責任を果たし、経営戦略と人事戦略の融合と実行を求められる立場であり、C-Suiteの中でも特にG3マネジメントチームとしてCEOの片腕として経営の最終意思決定を行う立場になっていくでしょう。

CEOは「ロマンとパッション」でビジネスのストーリーを語り、

CFOは「数字」でビジネスのストーリーを語り、

CHROは「人」でビジネスのストーリーを語る。

そして、これからの人事に必要な3本の柱は、

人事哲学

人事戦略

人事の数字

CHROは、自身の経営戦略への貢献という新たな能力開発とともに、人事部全体の専門性の向上にも努めていく必要があります。

これまで人事の仕事を学術的に教育するキャパシティーがない日本で、これから人事の職に就き専門性を高めていくためには、人事教育と人事職業資格が必然です。そして人事職のグローバル化や、そもそもの人事職の基礎の普遍性を考えるとき、既に世界で認められ、165カ国で5万人の受講実績のあるSHRMエッセンシャルズ日本語プログラムとSHRMクレデンシャル資格という選択肢は最も建設的で合理的であると考えられます。

*次月号は来月10日に掲載します。

華園ふみ江

一般社団法人 人事資格認定機構
代表理事
米国公認会計士
ASTAR LLP 代表

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