サイバーエージェントの「人事の数字」本当にやっていること! 第二弾【人事データ】と【HRダッシュボード】-後編-
HRダッシュボード】 過去〜未来に向けて
堤さん
データの分析では、鳥の目、虫の目、魚の目を定義付け、タレント・バンク1カ所に集約したデータを分析データとして提供する計画が進行中です。
華園
実際のHRダッシュボードを見せていただくことはできますか?
曽山さん
はい、可能な限り、堤さんシェアをお願いします。
堤さん
こちらが実際にリリースしているHRダッシュボードです。
華園
機密性が高いデータですので、差し支えない範囲で全体像を見せていただければと思います。(ということで、機密性の高い実際のHRダッシュボードは本コラムでは非公開となっております。)
※ここで、個人情報に該当しない範囲で現在のHRダッシュボードを見せていただきました。グラフを適宜取り入れ、またプルダウンメニューなどで、ユーザーフレンドリーでした。
堤さん
この様な形で、事業部ごとにHRBP(HRビジネスパートナー)もタイムリーに見られるHRダッシュボードを提供しています。各事業部の要望なども盛り込む形でまだまだ進化中です。
華園
グループ全体で一律に統一したHRダッシュボードの提供だけでなく、沢山ある事業部の個々の要望にも対応されるのですか?
堤さん
はい、事業部単位で独立性が高い為、各事業に合う形での人事データ提供が重要だと考えていますので、カスタムメードにも出来る限り応えていきたいと考えています。
華園
それはすごいですね。なかなかそこまで対応するのは大変ですよね。
その柔軟性と「トライ&エラー」で失敗を恐れず、どんどん新しいことを取り入れてどんどん前に進まれるのが御社の強みですね。
全般的に日本では、人の失敗を見て、いかに失敗しないでことを進めるか、という姿勢が多く見受けられる中、いつも御社の取り組みは素晴らしいと思っております。
曽山さん
嬉しいお言葉ありがとうございます!
華園
HRBP(HRビジネスパートナー)も既に事業部ごとに配置されているのですね。
曽山さん
はい、2013年年頃からです。
華園
そうですか。HRBPの導入もとても早いですね。アメリカなど海外でも数年前から一般化し、日本企業では今、まさに導入を始めた、または導入を検討しているといった段階ですので、やはりサイバーエージェントさんはアクションが早いですね。
華園
人事データと財務データは連携していますか?
堤さん
外資系で多く見られるようなERP環境ではないので、そこは現在連携していないです。財務データとの連携はこれからの課題です。
華園
そうですか。これから益々、人的資本(ヒューマン・キャピタル)に注力した経営が世界的に求められている中、財務情報と人事情報の連携は重要になってきますね。
今日は「人事の数字」について過去〜未来に向けてのサイバーエージェントさんのロードマップも含めて分かりやすくシェアいただきありがとうございました。日本の人事の方々に向けてコラムにまとめてシェアさせていただきます。
曽山さん、堤さん
これからの「日本の人事」のお役に立てればと思い、今回社内資料なども提供させていただきした。当社の情報が皆さんのお役に立てる様でしたら幸いです。
曽山さん
HRAIで華園さんが掲げているこれからの人事に必要な3つの柱「人事哲学」「人事戦略」「人事の数字」にも共感しています。
ありがとうございました。
華園メモ
サイバーエージェントさんは財務データと人事データの連携はこれからの課題と仰っていましたが、共有いただいた資料は企業概要・人員データ概要の情報など既に有益な数字をまとめておられるなと思います。
概要的な財務/人事情報で指標として最もベージックなものに、社員一人あたりの売上や経常利益があります。
グループ売上高が4,800億円で社員数6,000人ですので、社員一人当たりの売上高は8千万円。グループ企業が100社以上ありますので、グループの数字と100社の数字を並べてトレンドを見る。同様に社員一人当たりの経常利益のトレンドデータを見る。この二つが、グループ各社を横断して最も大枠の“経営効率の指標”となります。
創業23年となられますので、遡れるだけ同じ指標で年単位でデータを並べ、ここに社内外の重大なイベントを入れ込んで数字を読むと非常に興味深いと思います。
シェアいただいた人員データ概要では、一般的な平均年齢や男女比に加え、新卒中途比率やママ社員の人数・産休復帰率などがまとめられていました。
こちらは数と共に「比率」に注目して、例えばママ社員の比率を指標のひとつとしてダッシュボードに加味すると女性活躍のデータとして有効かもしれません。
また、これらの人員データの経年推移を上述の経営効率指標と重大イベントのトレンドに組み込んでみると、更に財務×人事の分析で興味深そうです。
「人事の数字」は大きく分けて、「財務×人事」「採用」「タレントマネジメント(評価+労務)」の3つに分けられます。
採用の分析(数字) では、TTF(採用までに要した時間)やCPH(雇用単価)など代表的なものについて、HRAIが提供するSHRMエッセンシャルズプログラムのテキストで講義しています。
タレントマネジメントでは、次のようなHRダッシュボードなど参考になりそうです。
例えば、グローバル企業ではHRダッシュボードに必ずあるのが、離職率です。離職率はゼロを目指すというよりは健全な組織のターンオーバーが何%なのかを判断する基準のため、それが維持されているかを見ています。
【まとめ】サイバーエージェントさんのお話と「人事の数字」
これからの人事のあるべき姿を既に実践されているサイバーエージェントさん。
これからの人事とは?「人事哲学」「人事戦略」「人事の数字」の3本柱がきちんとあり、そして何より、カスタマーオリエンテッド(顧客主義)であること。
では、人事にとって顧客とは?
それは組織に所属する全ての人です。これから益々人事に求められる事とは、経営陣がビジョン・ミッション・バリュー・パーパスに沿った経営で組織のゴールを達成し続けるのをサポートし、社員の資質・嗜好を敏感に適切に経営に取り込んでいくことです。
経営陣も社員も顧客であると捉えるのであれば、様々な人事の指標をデータで数理的に分析し、顧客にとってより魅力ある有益な情報を提供する必要があります。
経営陣と社員を繋ぎ、人事を数理的に分析し、カスタマーオリエンテッドなサイバーエージェントさんの人事はロールモデルであり、今回HRAI人事資格認定機構でコラムとして皆様に紹介できたことに大変な喜びを感じます。
「人事の数字」はまだまだこれからの分野ですので、HRAI人事資格認定機構でも継続的に日本の人事プロフェッショナルに有益なアドバイスを提供していきたいと思っています。
私が講師を担当するSHRMエッセンシャルズの講義内でも、受講者の方からよく「人事の数字」の重要性は理解しているのですが、どこから手をつけたらいいのかわからないといった声が多く聞かれます。そして仮に数字を分析してもそれが正しいかどうかわからないのでやってみるのが不安、とも。
まず大前提として、「数字の分析」において一般的に考えるような「正解」はないと思っていいでしょう。
なぜなら、「数字の分析」とは、記録データのインプットではなく、インプットされた膨大な記録データのアウトプットを人間が読解して解釈をつけていくことだからです。
そして、「数字の分析」の目的とはデータのアウトプットを並べることではなく、そのデータに解釈をつけて、より確度の高い未来の予測を行うことだからです。
そして未来が現在になった時点で、どのくらい過去に行った予測と乖離がないかを実証し、さらにそこから先の未来の予測についてより精度をあげる努力をする、ということです。
1.「インプット・データの正確性の担保」
2.「アウトプット・データは読解して解釈をつける」
3.「解釈した数字からストーリーを組み立てて未来の予測をする」
4.「過去に行った予測が現実とどのくらい整合したかを実証する」
5.「未来への予測の確度を上げる」
「数字の分析」はこの様に5つの段階にまとめられます。
これまで制度内に全社員が収まるように失敗なく管理をするゲートキーパー的な役割を担ってきた多くの日本の人事にとって、大きな改革とトライ&エラーが必要な時が来ています。
そしてトライ&エラーを当然のこととし、エラーを罰せず、そこから学ぶ成長することをより奨励する企業文化を構築することが、これからの人事にとっても、タレントマネジメントにとっても、組織にとっても大切だと思います。
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