「長期的にダイバーシティーを実現できる企業を構築するためには、社内でジュニア人財の育成を!」SHRM CEOの記事がHarvard Business Review に掲載されました(参考要約)

今のアメリカとアメリカ型ビジネスは、人種と職場における平等において更なる「魂の探求〜Soul Searching」が必要な段階にある。

全米における企業組織においてダイバーシティー実現に対して改めて決意表明をしている。

当然、ダイバーシティーへのコミットメントは以前にも行われている。しかしながら今日に至るまでその実現は困難を極めている。フェイスブック(FB)が2014年から発行を開始した自社のダイバーシティー報告書を見ても、例えば黒人労働者の比率は2020年までに、3%から3.8%と6年間で0.8%しか増加していない。

しかしながら、テック業界の最大手FBよりもその問題はもっと古く、さらに広範囲である。アメリカの大手企業では、黒人男性がマネジメントに占める割合は、1985年から2016年の31年間で僅か0.2%の増加(3%から3.2%)に留まっている。

では、これまでのダイバーシティー施作の問題点は何か?それは、「採用」に重きを置き過ぎていることであると推察する。

例えば、Googleが約175億円を投じて行ったダイバーシティー施作は、ダイバーシティー人財の新規採用を20%増加するという約定が含まれていた。その年、歴史的黒人大学の卒業生の採用率が急上昇したのは確かである。

しなしながら、外部の新規人財にばかり注目している企業目線では、片手落ちではないだろうか。2018年のマッキンゼーの調査によると、有色人種が占める割合は、エントリーレベルでは64%となっているが、エグゼクティブレベルでの割合は半分の32%となっている。

専門的職種におけるマイノリティーと女性の比率も低い。(例えば、有色人種が占める割合は、獣医5%、保険数理士6%、パイロットでは9%である)これでは外部からダイバーシティー人財を獲得しようとするのは得策ではないのである。

多様性のある職場(ダイバーシティー)の実現において、多くの企業が身近な有望人財を見落としている。それは既にいる従業員である。

ダイバーシティーを推進する上でもっと有効で身近にあり即効性のある鍵は、現在いる従業員の「スキルアップ」である。そうしてスキルアップした従業員を現在白人もしくは男性が席巻している職務に昇格させていくことにある。

それには人財開発に新たなアプローチを必要とする。これまで企業は人財教育・人財開発に力を入れてきた。しかしその多くが、「システムの習得、商品知識、コンプライアンス教育、もしくはエンゲージメントを維持するために提供する学び」となっている。

それに対して、従業員がステップアップする為の学びの機会はほとんど提供されていない。一方でその様な企業の多くが外部からのダイバーシティー人財獲得には多大な努力をしている。

それはまるで「社内に入ったら、ご自分でどうぞ(釣った魚に餌はやらない)」と言っている様である。

既に在籍する従業員のスキルアップによるダイバーシティーの推進を行うには、5つの点を押さえる必要がある。

①象徴的事象だけでなく、人財の可動域をトラックする。

②行動可能なゴールにベンチマークを設定する。

③タレント・プールを見極める。

④パイプライン(後継プラン)が健全か評価する。

⑤ダイバーシティー促進の為のタレント・エスカレーターを構築する。

ダイバーシティーはゼロサム・ゲームである必要はない。

企業は多様な人財を雇い入れるのと同時に、従業員の社内での可動域(モビリティー)に投資することで、多様な才能のパイを大きくしてくことができる。

その様な継続的でオーガニックなアプローチは、真にインクルーシブな企業文化の創造を可能すると共に、ビジネスのすべての利点は同時にもたらされる。

(上記は参考要約となります。原文はこちら


【HRAI後記】

この記事はアメリカの中々進まないダイバーシティーについて語られていますが、日本の現状にも当てはなる部分が多いと思います。日本でダイバーシティーというと「女性」「外国人」の採用を増やすことに企業の努力は重点をおいています。しかしながら、採用した後のキャリアアップの為のトレーニングやステップアップの機会を増やしていくことも重要です。「性別も考慮した年功序列」「大量新卒採用からの終身雇用制度」は既に成り立たなくなってきています。日本のダイバーシティーの本当の一歩は実は「ジョブ型」人事への転換から始まるのではないでしょうか?従業員一人一人のスキルインベントリーを作成し、スキルアップ、昇進のマッピングをしていく。従業員一人一人にジョブディスクリプションがあり、定期的に本人とマネージャーが見直しをしてジョブ(職務)と責任範囲、スキルが現状とマッチしているか確認する。従業員が成長していればジョブと責任範囲を広げる、といったジョブ型で基本となる考え方です。

ジョブに基づかない人事マネジメントは、すべての仕事が高度に専門化していく現在において組織の競争力を低下させる事になるかもしれません。

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