人事のプロが会社にいるとどう変わる?

小企業庁によると、組織のサイズは様々であるが、上場企業は約3800社、中小企業は4,200,000社あると言われている。すなわち、この99.7%の企業が日本経済を動かしており、景気を上下させる重要な鍵であると言っても過言ではないだろう。

 その中小企業に目を向けると、組織のサイズは様々であるが、バックオフィス(管理部門)は必ずある −総務部、経理部、労務部、人事部、広報部、法務部など様々。

その中でも特に経理や広報、法務など専門性の高い業務以外の、誰でもできると思われている人事や総務などは、十把一絡げに兼任する体制になっていることが多々ある。少人数ゆえの苦肉の体制ではあるが、会社の将来を司るキーマンが社長“のみ”になると会社は伸び悩むことが多いと言われる。

 余談ではあるが、実際に筆者がコンサルした会社で、30人ほどのあるメーカーがあった。この会社は社長の突拍子のないアイディアがヒットになることが多かったものの、人事関連は驚愕的に稚拙であった。例えば、30人の会社で職位が32階層も存在していたり、採用の基準を「いい人」としていたり、契約書というものをほとんど結んでいなかったり。しかし、それは仕方ない…社長は全能ではないのだ。

 古より「人は石垣、人は城、人は堀」(武田信玄)と言われるが、悲しいかな、会社の体制的にも担当者的にも、結果的には人事が重要視されていないかのように扱われていることが多いのが実情である。こうした多くの企業現状のように、このレベルが今後の人事部で良いのだろうか。

当然、答えは「否」である。

 企業戦略を立てるのはいいが、それを実行するのは「人」である。人を効率的に効果的に戦略的に動かすこと自体が「戦略人事」であり、企業戦略を正しく機能させて、ビジョンを達成するための仕掛け人がものを言う。欧米では、営業部より人事部が花形職種であることも頷けるだろう。

もちろん、人事の仕事は戦略人事だけではなく、それ以外の粛々とこなすような業務担当者も当然必要であるが、少なくとも人事部を司る担当役員、マネージャー、部長といった人たちは、人事のプロでなければならないだろう。しかし、人事部に複数人数を配置することが難しい企業もあるだろうし、その場合は本人が作業をせざるを得ないだろう。

大手であろうと中小であろうと、人事関連にもプロがいる方が断然いい。

 人事のプロとはどういうヒトか。それは、経営理念(もしくは戦略)に即した採用方法や教育手法、過酷な競争社会で勝ち抜くための評価/報酬制度の考案、基本的な労務のUp-to-dateな法律や情報などを一通り理解しており、こうしたことを会社が目指す方向性と戦略を理解した上で「ヒト・組織」の側面から融合させ、経営戦略を支え達成させる人事判断を下せる「賢い人材」である。

人事部の社員全員がプロである必要はないが、少なくとも「長」になる人は、プロでないと本来の意味での人事は果たせないといっても過言ではない。

 では人事に長けた人がいると、どう組織は変化するのかだろうか。会社の経営状況を組織的側面から捉え、ビジョンや目標を達成するための行動と判断が可能になる、すなわち、戦略的な人材採用や教育手法、評価制度や報酬制度の構築や変更、組織図や担当職種人数の調整など、「経営視点からの人事行動と判断」である。これが可能になると、当然企業職種のトレンド、景気、商習慣など外部的要因にも左右はされるものの、少なくとも企業組織体としては、飛躍的に成長できる無限の可能性を帯びてくる。

 CEOやCFO・CIOはいてもCHRO(Chief Human Resource Officer)が欠如していると言われる日本企業。ヒトや組織の側面から経営を支えることのできる人事のプロの養成が、今早急に求められていると言えるだろう。

丸山 琢真

一般社団法人 人事資格認定機構
監事
株式会社エバーブルー 代表取締役
焚火研究家

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